設備改修メモ

☆ 汚水・雑排水合流型の鋳鉄管 腐食つまりの危険

昔は汚水(トイレ用)竪管は鋳鉄管、雑排水(トイレ以外)竪管は鋼管という配管で主に配管されていました。両者鉄管ですが、鋳鉄管は鋳物で肉厚が厚く耐久性は高いが非常に重く作業性はあまりよくない。鋼管は一般的な鉄管で鋳鉄管に比べ厚みは薄く、作業性はよいが、腐食しやすい。また鋼管は築30年程度で、耐火性能を持った樹脂管、ないしは腐食対策を施した鋼管にて更新されています。鋳鉄管も肉厚が厚いとはいえ腐食するため40~50年程度で更新と思われておりましたが、トイレ(水洗)だけの排水に使われており、流れるものが主に水で、またそれに加え尿に含まれるカルシウム分が被膜になり、築後50年を経過した汚水鋳鉄管は、今現在も問題なく使用されています。しかし、30~40年前より、汚水と雑排水を合流させる集合管継手の登場により、汚水と雑排水を合流させる竪管で施工された建物が多く建てられるようになり、またその竪管を鋳鉄管で施工されるようになりました。これが最近になって問題になってきております。
実はこの集合管に鋳鉄管が使われていたのは、腐食しにくく耐久性が良い、また防火区画や流水音が小さい等の理由だと思われますが、合流する継手部分が流れをよくするためフィンがついているなどで管内の清掃ができていないことより、管内に汚雑物が堆積し、微生物腐食、黒鉛化腐食が発生し、またその腐食に汚雑物が堆積するという悪循環により、つまり、漏水が築20年位から発生しているという実態が出ています。この場合は前述のような汚水単独系とは異なります。この状況を管内カメラにて早急に確認し、不具合個所は早急に対処する。その後においては定期清掃により管内確認を最低でも5年に一度行いながら、しっかりと清掃することにより回避可能と思われます。

 

☆ 某マンション、テレビケーブル取替検討の話

 某マンションではテレビ線に同軸ケーブル(金属線)が使われテレビ放送を映しています。この線は古い(約40年前)ですが、BS放送までは何とか視聴可能となっています。(CSや4K,8Kは見れません。)
CS放送以上の視聴を考え、線の入れ替えも考慮すべき、ではありますが、今現在、通信環境の変化、情報量の増大により、金属線から光ファイバー線に配線が移行しつつあります。最近では光ファイバーの施工(接続)も簡単になってきており、集合住宅であっても各住戸まで既存の電話線の経路を使い、手ごろな工事費で施工するところも出てきております。また無線LANにて提供を計画している通信会社もあります。いずれにしても配線工事については進化する過程であり、ちょっと様子見の状態かと思います。

☆ 集合住宅における最近のインターホン設備

最近の集合住宅のインターホンは、単に来訪者を迎えるわけではなく、安全・安心の強化や、いろいろな情報のやり取りが出来るようになってきました。非接触キー、集合玄関機のモニター、行先階のみのエレベーター停止などは以前よりありましたが、今月の電気使用量はどれくらいかしら?総会の案内・出欠、設備点検の案内、電気自動車の充電情報など新たな情報がインターホンの中にどんどん入り込んでいます。電気の技術は目を見張るものがあり、その中でも情報通信分野は安心・安全・利便性を求め、益々複合化していくと思われます。

☆ 大規模修繕ここがポイント

 私はマンション設備改修の設計監理業務の延長で、大規模修繕工事のコーディネーターもしております。コーディネーターというのはマンション管理組合の顧問的立場で、マンションの大規模修繕の初めから終わりまでの進行と記録のサポートをしています。マンションの最近の傾向で、管理組合の理事会は、下部組織(専門委員会)として修繕委員会を設置し、修繕委員会は大規模修繕工事を計画・実施していきます。そのほか長期修繕計画の策定などマンションの維持管理、向上について検討していかれます。ただ、修繕委員会の方々は大規模修繕工事を専門とした方々ではなく、工事の知識的なことや、マンションの運営的なことははよくご存じであっても、大規模修繕工事の具体的なスケジューリングや選定など、詳細な進め、チェックポイントについては難しいと思われます。最近は書物やネットなどで情報はとれますが、ガイドラインはわかっても、実際はマンションそれぞれで、なかなか一筋縄ではいかないのが実状です。コーディネーターは修繕委員会を設立する辺りより工事を進めるサポートをしていきますので、かなり実践を踏んだ人(相談業務や設計・監理業務、工事現場の経験など豊富で、マンション管理組合運営も十分理解し、業務を行ってきた人)を選定することで、区分所有者に対し、情報を十二分に開示した進行が出来ます。工事というものは、どうしてもわかりにくい部分があり、関係者を不審に思われる所が良くあります。コーディネーターを入れることにより、合理的で、区分所有者の合意形成ができ、その内容を情報開示した工事。大規模修繕工事ここがポイントです。

☆ 元請業者に思うこと

現在、大規模修繕工事の顧問をしているマンションの現場で、居住者からのクレームが徐々に増えて、元請会社の現場管理(施工,工程、安全等管理)に非常に苛立っている物件があります。というのも、そのマンションには設計事務所の工事監理者がおり、当初から工事着手が遅く、作業も荒かったので、私の方からは居住者目線で注意しました。しかし工事監理者ではないため、注意しても現場管理者から柳に風のような対応をされました。結果としてクレーム(汚したり、傷つけたり、仕上がりが悪かったり)が増えたのですが、イラッとする最大の理由はなんといってもそのクレーム対応で、居住者からクレームが出れば、ただ下請け業者を叱り、クレームの出た所を直させればよい。という姿勢です。こちらがその点に対し、元請会社として具体的な改善策を、と言っても、クレームの場所は直しています。直しているのにどこが悪いのか。と開き直っています。本来仕事というものは、依頼者の出来ないこと、必要なものに対し、金銭と引き換えに技術や商品を提供するわけで、お金をもらって仕事をする以上、最良の仕事をすることがプロの仕事だと思います。それが今では、素人である顧客に対し取敢えず工事をし、指摘を受けたところだけを手直しするという仕事で、素人相手にそれがわからなければ特に手直ししないような仕事ぶりであります。※特に手直ししない所は一般的に手抜き工事といわれる部分かと思います。

最近の元請会社(専業の改修ゼネコンから大手ゼネコンまで)の現場責任者は資格はあるものの現場を見ていないのか実務的な知識と経験がなく、私の目から見ると、どうも自分の会社から「施工については口を出すな。下請けの言う通りにさせ、問題があれば下請けに責任を取らせるよう対応しろ」と指導を受けているように思います。改ざんの問題等はその延長線上だと思います。

建設工事は人々の暮らしに直結するもので、そのように大事な仕事であることを工事に携わる者は十分認識し、自己研鑽してほしいと思います。

☆ 腐食もいろいろ

設備改修で多いのが鉄管の腐食ですが、銅管やステンレス管でも腐食が、また、異種金属の腐食でアルミも・・・ 金属の腐食に要注意!

① 全面腐食
  金属の全面が、ほぼー様に腐食している場合を言う。
② 局部腐食
  腐食が局部的に集中して起こる場合を言う。
③ 潰食
  液流に伴って金属材料表面を磨耗する時に起こる激しい腐食。建築設備配管では給湯システムの銅管配管でよく見られる。
④ キヤビテーション損傷
  流体が高速で管内を流れる時に、継手近傍に負圧部分ができ、そのため気泡が発生し管壁面に激突する際に起こる、通常の腐食環境下では見られな  い激しい腐食。
⑤ 応カ腐食割れ
  応カによって加速される腐食。応力腐食により材料に割れを生ずる場合を応カ腐食割れと言う。アンモニアイオン存在下の銅合金、塩素イオン存在  下のオーステナイト系ステンレス鋼などに見られる。
⑥ 応カ疲労
  腐食環境下におかれた金属材料に繰り返し応カがかかり機械的疲労に比べて著しく損傷される現象。
⑦ 隙間腐食
  極めて狭い隙間の下にある金属材料が局所的に起こす腐食。
⑧ 孔食
  金属材料のある部分に深いあなを穿つ局部腐食。銅管、ステンレス鋼管等で見られる。
⑨ 粒界腐食
  結晶粒界に沿つて進行する腐食。オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部等に発生しやすい。
⑩ 選択腐食
  合金の構成成分のー部が選択的に腐食脱落する腐食。砲金バルブの黄銅製弁棒の脱亜鉛腐食などが典型的事例。
⑪ 異種金属接触腐食
  異種金属が接触してガルバニック電池が構成されることにより起きる腐食。銅管と鋼管。鋼管とステンレス鋼管との接続部などで発生する。

⑫ 黒鉛化腐食

  黒鉛化腐食は鉄の母相が腐食される脱成分腐食で、主に鋳鉄管でみられ、腐食生成物と多孔質の黒鉛が残る。 多孔質の構造が残るという損傷の

  結果、強度、延性、密度が低下することになる。 通常は低pH、流動性のない状況で生ずるが、特に土壌や湿潤硫化物環境に接しているときに

  起こりやすい。

⑬微生物腐食

  微生物が直接金属を栄養源として侵食するわけではなく、代謝生成物が、電池を形成しアノード反応やカソード反応を起したり、微生物の繁殖に

  よる菌そのものが酸素あるいはイオンの濃淡電池を形成して腐蝕の原因になるといわれている。汚雑水堆積化で多く見られる。

 

☆ 新しい配管材 意外な盲点

最近の配管材で、地震に強く錆びないポリエチレン管(水道用耐震型高性能ポリエチレン管)や耐火被覆のいらない塩化ビニル管(排水用耐火VP)がありますが、特徴だけを見て使うとあとでクレームが・・・。

前者のポリエチレン管は、凍結の恐れが少ない所では保温不要と説明されており、保温せずに施工したら、夏場の結露がひどく水浸しに。

これは直結給水方式に多く、地中は温度変化が少なく、夏場の地中の水は外気より温度が低いため、暖かく湿度の高い建物内で結露現象がおきやすいことが主な原因です。

一方後者の耐火VPでは、防火区画貫通において、継手を含め他の材料との組み合わせや使用方法により「消防でOUT!」となることがあります。(特定の消防評定しか受けていないため、使用の際は消防署に確認を) また、消防でOK となって設置した所、今度は「排水音がうるさい」とクレーム。

塩ビ管は腐食しない良い材料ではありますが、金属管に比べ遮音性に劣るので、使う場所にもよりますが、騒音問題があります。他にも、管の伸び縮み(線膨張係数)が大きいため経年疲労で管が割れたり、冷たい排水による結露問題もあります。

ご参考まで

☆ 屋上がプールになってませんか?

雨が降り、ふと屋上を見てみると屋上がプールに。原因はルーフドレン(屋根の雨水排水口)の目皿にごみがたまっていたり、目皿が取れて何故かボールが塞いでいたリ、といろいろですが、別に大きな問題がある時があります。それは大規模修繕などで屋上防水工事をしたとき、それなりの規模の大規模改修業者が、排水の穴に防水材を過剰に乗せ、穴の口径を狭くしていました。(後日管理組合からの指摘により、その施工業者が手直ししました。)排水の穴は、元々屋上の面積と地域の最大雨量で口径を決めています。数値によっては多少の余裕はあれど、ごみで狭まったり、防水材を過剰に乗せたりすると、穴の外周部の面積が狭まりますので、結構排水しにくくなります。また、最近のゲリラ豪雨で、地域ごとに決めている最大雨量も各自治体で増やしています。いずれにしましても普段あまり気にしない屋上ですが、放っておくと漏水事故につながります。屋上を定期的に確認し、排水周りのごみの除去や排水口の状態を確認することが必要です。

☆ 集合住宅・専有部のリフォームに注意

先日給排水設備の改修工事で、専有部のリフォームについて問題がありました。それは浴室のサイズアップで、普通床上の専有部横引き排水管であれば問題はなかったかと思われますが、そのマンションでは、下階の天井に専有部横引き排水管があり(裁判事例でもある「専有使用であって専有部内になく、維持管理においては、専有部分に属さない付属物、すなわちマンション全体の付属物」と判断される排水管)、サイズアップが原因で既存の床貫通の洗面及び浴室排水の工事が出来ませんでした。ちなみにこのマンションでは、浴室の床貫通配管を更新するにあたり、個々のユニットバスを解体等費用、対応で合理的でないとの判断で対象外としていました。(貫通配管は管理組合の維持管理との判断より、個々でユニットバス改修時に取替をする〈管理組合より一律の負担金〉) このサイズアップ住戸は数戸あり、結果的にはほとんどの住戸で、洗面・洗濯の貫通管につなぐのでなく、浴室の排水につなげていたため、管理組合で排水管の性質(におい等)的なものを考慮、検討した結果、その洗面・洗濯の貫通管は使用不可とし、切り離しての施工となりました。なおその管理組合では、この問題を受け、改めて専有部のリフォームについてのルール決めを検討されるとのことでした。最近のマンションでは、外国人の投資目的や民泊など、専有部内については自由と思われ、好き勝手にリフォームされているケースが多くなるかと懸念されます。特にベランダ等、普段管理組合として管理できない共用部分など多いようです。専有部内であっても管理規約など規則に反することは「共同の利益に反すること」となりますので要注意と思われます。